身体が整う
今朝は背中なんか忘れてシャキッと起きた。もう背中を下にするのに飽きたので飛び起き
た!
日本行きが無くなり、なんとも異常気象14度のブリュッセルでの年越し。昨日は久々に
自分で車を運転してナビを聞きながら友達の家に行った。グリンベルゲン、ビールで有名
だ。普段は買い物ぐらい、あとは全て夫の横なのでちょっとドキドキ・・だいたいナビの
言う通りにしないで自分で勝手に右まがっちゃって一本早すぎて・・・みたいなことが多
かったのだが、学生や子供たちが全く見知らぬ土地、例えば彼らにとって東京駅・・でも
ナビできちんとホテルにたどり着く姿を見て「すごいなあ〜いつかはやってみたい」と思
っていた。昔はサッカーのアウェーの試合に子供達を連れて行くのに連なって運転して行
くのがいつもおいていかれ、その上ナビの読み方もあまりわからず、泣きたいのを我慢し
て運転したものだが・・
そこまで大袈裟ではないにしろ、ちょっとの冒険・・・特に演奏会という大冒険がない今
、この緊張感は大事なことかもしれない。特に私にとっては!
旧友との話も進み、なんとなく清々しい気分で自宅に戻り、もう一つのアポは子供が頭ぶ
つけた、で来なくなり。全くもってそんな子育て時代を忘れてしまった!周囲にはさぞか
しうるさい親だったと思うが今は自分がその「周囲」になるとほとんど関心がない。
堀田善衛の「方丈記私記」を読んでいる。面白い!鴨長明という人が自分の足で歩いて火
事や突風の様子を描く有様。大飢饉を描く。死者4万人まで数えて一人一人の額に「あ」
の文字を指でなぞったというお坊さん・・・その有様を今度は堀田さんが戦争時代の体験
、自分に重ねて記述している。東京大空襲・・・4万人を2ヶ月かけて数えて歩くという
日常の異常さとそのお坊さんの行為が心に響く。
またその飢饉の時代が歴史で言えば鎌倉で頼朝、義経、あるいは源平合戦の最中だったと
いう・・・私が全く知らなかった「地」の話。庶民の話だ。数字の中には文字だけではな
い人の心が描かれていることの大切さ、リアリズムがある。
ブラームスのインテルメッツオもやっと118−1が聞こえてきた。なんかこの安らかな
Es Durは今までそぐわず、素通りしてた。
身体が整うと昨日は思ってもいなかったことが想像できる。
頭より身体が知っているのかもしれない。
2022年1月3日 ブリュッセルにて