聴くこと
書くことの続きは「聴く」
恵子先生のレッスンは続く。
音程から始まり、結局エコノミックに弾く、ということは重要な音がどれであるかを把握
する事、そしてそのためには長い展望を持って音楽を見ていく事、それで初めて「聴く」
ことができるといういわば最大な音楽的要素に帰結する。
重要な部分とつなぎの部分、威勢を張る場所の的確さを間違えるとただ単にその場しのぎ
のかっこよさ、に終わる。
昔ピアニストのルドルフ・ゼルキン師ヴァーモント州ブラッテルボロの彼の自宅で冬に何
日か過ごしたことがある。その時ブラームスの1番のソナタを一緒に練習したのだが、そ
の時も彼はスコアを見ながら「ここはいるでしょ。ここはいらないでしょ」と教えてくれ
たことを思い出した。
若い頃は「全ての音をきちんと出す」という楷書体の弾き方を習う。もちろんハーモニ
ー、小節によっての強弱はある。
今になって「エコノミック」というのはそれを全てやってきた上での再築。いわばいらな
い音は切り捨てる。指が勝手に行ってくれる。重要な音をどれだけ意識できるか?
またはフレーズの読みがどれだけできているか?
昔ゼルキンは車での移動中ずっと目を瞑り、眠っていらっしゃるかと思うと脳の中でこれ
から弾く音楽を「再生」して聴いていらした。
「あ、30秒早いな」
とコンチェルトでもソナタでも通した後におっしゃっていた。
脳の中で「聴く」
これからの課題をなりそうだ。
2023年2月20日ブリュッセルにて